ウッドショックで木材価格が高騰しているのに木材が市場に出てこない理由

 

 

こんにちは、ナカイです。

まだまだ高騰している木材、別の記事でウッドショックについて紹介しました。

コロナウイルスの影響で起こったウッドショックの原因と日本の木材供給の脆弱さの根本とは

国産材の価格は1.2〜1.5倍になり、地域によっては今までチップにしかならなかった木材にまで高値がつくほど日本全国で木材不足が起きています。

日本の木材不足の理由が輸入材は価格が高騰し、国産材の市場に供給量が中々増加しないためです。

もし僕が林業について詳しく知らないなら「なんで木材を伐採・搬出する量増やさないんだろう?せっかく高値で稼ぎ時じゃん」と思っていたでしょう。

実際に危険木の伐採現場でも依頼主や近所の方から「〇〇に山があるのだけれど、今伐採したら高く売れるかね?」と質問されます。

今回は、木材の供給量が増加しない理由について紹介します。

日本の年間木材使用量

そもそも日本は年間どれくらい木材を使用しているかご存知ですか?

2020年は日本は年間で7,443万9,000m3もの木材を使用しています。

日本の国材自給率は年々上がってきてはいますが、未だに60%程(4,329万m3)を輸入材で補っています。

コロナウイルスの影響もあり需要数が10%、輸入量は15%減少しました。

2020年の国内総生産木材は3,114万9000m3となっており、前年に比べて増量しています。

日本は年々輸入量は減少しており、2008年には木材(丸太・製材・合板等)の輸入量ランキングでも上位10以内には入るほどの木材輸入国でした。

2018年のデータを見ると、丸太においてはその他の国々に含まれるほど減少し、製材・合板も輸入量が減少してきています。

これは日本の森林が製材として使える程に実ってきたからと言えます。

日本の森林資源蓄積量は年々増加しています。

しかし、何故木材は市場に出てこないのでしょうか?

林業従事者の少なく、木材の搬出に限りがある

日本では樹木の伐採をチェンソーを使い、人の手で行っています。

高性能林業機械もありますが、急斜面での伐採や間伐は機械では行えないため多くの林業事業体でチェンソーが使われています。

しかし、その伐採を行う林業従業者数が年々減少傾向にあります。

1955年(昭和30年は木材自給率90%越え)には14.6万人もいた林業従業者は平成27年には4.5万人と1/3以下の人数になってしまいました。

また、林業の高齢化率は平成27年時に25%と全体の1/4が65歳以上です。

林業で有名なドイツは林業関係者は100万人以上に及びます。

日本では人気があまりまりませんがドイツではカッコよく、子供が憧れる職業なんです。

日本も頑張って林業に若手が入ってこれるように全国に林業大学校や緑の雇用といった補助制度で、若年層の増加を後押ししています。

ちなみに僕は、京都府立林業大学校で林業に必要な資格や知識・技術を学びました。

伐採は簡単じゃない

樹木の伐採は1日2日でできるような簡単なものではありません。

木の重心、枝葉、受け口、追い口1つ1つしっかり行ってこそ安全に伐採することができる一定の技術が求められる仕事なので「木材価格が高値だからといって自分で切っちゃえ」なんてことはしないでください。

休日に一般の方が自身の所有林や知り合いの家の木を伐採し、作業途中で怪我をする(チェンソーや樹木の倒伏、墜落など)と言ったニュースを毎年何件も報道されているのをよく見ます。

最近は1人キャンプなど森林に入る方が増えている一方でYoutubeやテレビなどに上がっている伐採の動画の中には危険すぎて、見てられないような動画もあります。

樹木は自然のものなので、重心や枝葉、周囲の状況によっては狙った場所からズレたり、思ってもいなかった動きをすることがあります。

毎日山で伐採している方々でも、伐採した樹木が地面に着くまでは樹木がどう動いても反応できるように目を離しません。

実際、伐採の技術を磨くのは切った本数と経験です。

何本も切っていく中で自分の癖を直し、理想の受け口にしていく必要があります。

僕は林業大学校を卒業するときに先生から「林業は10年は修行だ」と言われました。

伐採するまでが大変

CREATOR: gd-jpeg v1.0 (using IJG JPEG v62), quality = 100

多くの方が「森林組合や弊社のような民間事業体に伐採を依頼すると伐採してくれる」と思うかもしれませんが、伐採は簡単には行えません。

実際今伐採している森林も事前に様々な申請を行う必要があります。

伐採を行う場合は、森林所有者もしくは立木の買取人が伐採開始日の90〜30日前までに各市町村に『伐採及び伐採後の造林の届出書』を提出する義務があり、提出しないと罰則があります。

その際に、その市町村の森林計画に適した施業内容を計画し、見積もりを作成します。

実はウッドショックによって木材価格が高騰しているにも関わらず市場の木材量が増えないのはこの仕組みがあるからです。

例えば、ウッドショックによってスギの1m3が18,000円の時に計画書を作り市町村に提出します。

伐採許可が2ヶ月後におりました。

この時には木材価格が下がりスギの1m3が12,000円になってしまうと想定していた利益が出せなくなってしまいます。

ウッドショックがいつまで続くか分からないのと、申請してから1ヶ月以上先でないと伐採できない状況が、木材が市場に中々木材が増加しない理由の1つです。

最後に

木材市場に中々木材量が増えない理由について紹介しました。

「木材価格が高騰しているのになんで伐採しないのだろう?」と思う方への回答としては『伐採しないのではなく、伐採できない』です。

木材の搬出が中々増えないのにはいくつかの理由があり、林業の課題でもあります。

近年SDGsやウッドショックなどで注目を浴びていますが林業は施業の成果・結果が現れるのは50年以上先の話なんです。

現在伐採している森林も先人が植えた樹木を伐採しています。

先人に感謝して、1本も無駄が無いよう日々作業を行っています。

気になる点、質問ございましたら気軽にFacebook株式会社アーボプラスにコメントしてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。