特殊伐採をするために必要な資格と研修は?付随する資格の取得方法についても解説

 

特殊伐採は林業や建築業において必要とされる技術であり、専門性と安全性が求められます。そのため、誰でも簡単にできるものではなく、資格の取得や研修の受講が必要です。

活躍の場は山中だけでなく、道路脇や神社の境内など多岐にわたります。

弊社がこれまでに行った中には、1人しか入って行けないような建物の隙間に生えたクスノキの伐採や、国宝の横に生えている樹木の伐採などがありました。

今回は、高所木や支障木の特殊伐採に必要な資格と取得方法についてご紹介。重機の取り扱いや林業に関連する資格についても説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

「特殊伐採」とは?

 

特殊伐採とは、背の高い木や巨木を根本から倒さずに伐採することをいいます。

基本的には、人が木に登って頂上の部分から少しずつ伐り、それをロープやクレーンを使って安全に地面に下ろしていきます。また、高所作業車のカーゴに直接人が乗り込み、上部から枝葉を徐々に伐ることもあるでしょう。

個人のお宅に生えている木や道路脇の街路樹など、根本から伐採すると建物や送電線に当たる可能性があり危険であるケースにおいて特殊伐採が求められるのです。

危険な場所での作業も多いため、安全確保の方法やロープやチェーンソーなど道具の使い方、伐採に必要な重機の免許などを習得し、専門知識と高い技術の備わった林業のプロが作業を行います。

伐木業務のために必要な資格「伐木等の業務に係る特別教育」

伐木(伐採)の業務を行う場合、業種にかかわらず労働者は国が定める特別教育を受講し、資格(修了証)を取得しなければなりません。(労働安全衛生法第59条及び労働安全衛生規則第36条第8号)

伐木業務のために必要な資格は「伐木等の業務に係る特別教育」の受講で、現場で安全に業務を行うための知識を学びます。

「伐木等の業務に係る特別教育」の内容

新たに資格を取得するためには、下記のカリキュラムの修了が必要です。

 【学科科目】 
  • 伐木等作業に関する知識 [4時間]
  • チェーンソーに関する知識 [2時間]
  • 振動障害及びその予防に関する知識 [2時間]
  • 振動障害及びその予防に関する知識 [2時間]
 
 
【実技科目】 

 

  • 伐木等の方法 [5時間]
  • チェーンソーの操作 [2時間]
  • チェーンソーの点検及び整備 [2時間]


伐木作業等の安全対策の規制が変わります! – 厚生労働省より)

外部の教習センターなどで、約3日かけて資格を取得します。受講料は教材含めて25,000円ほどとなっています。

2020年の法改正について

2019年に労働安全衛生規則の一部改正があったため、改正適用日の2020年8月1日より前に特別教育を受けた伐木担当者は、新設された特別教育もしくは補講を受講する必要があります。

改正前は伐木の対象(大径木と小径木)によって講習が分かれていたのですが、2020年8月1日以降は特別教育が統合されて科目が増えました。

【補講が必要な修了者及び科目】

「伐木等の業務に係る特別教育 大径木」修了者

  • 学科科目 2時間
  • 実技科目 0.5時間

「伐木等の業務に係る特別教育 大径木(チェーンソーを除く)」修了者

  • 学科科目 6時間
  • 実技科目 4.5時間

 

「伐木等の業務に係る特別教育 小径木」修了者

  • 学科科目 2時間
  • 実技科目 3時間

樹上(高所)で作業するのに必要な資格

 

特殊伐採では、不安定な足場かつ高所での作業が求められます。自分の身を守り、安全に作業を行うための資格を確認しておきましょう。

ここでは、「フルハーネス型安全帯(墜落制止用器具)特別教育」と「ロープ高所作業特別教育」について紹介します。

フルハーネス型安全帯(墜落制止用器具)特別教育

高所作業における墜落事故を防止するために、厚生労働省は「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」を公表しました。特に危険性の高い業務を行う労働者は、「フルハーネス型安全帯(墜落制止用器具)特別教育」を受けなければなりません。

受講対象者は、「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務を行う者」(労働安全衛生規則第36条-41より)とされています。

特別教育の内容

資格を取得するためには、下記のカリキュラムの修了が必要です。

【学科科目】
  • 作業に関する知識 [1時間]
  • 墜落制止用器具(フルハーネス型のものに限る。以下同じ。)に関する知識 [2時間]
  • 労働災害の防止に関する知識 [1時間]
  • 関係法令 [0.5時間]
 
 
【実技科目】
  • 墜落制止用器具の使用方法等 [1.5時間]

「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」厚生労働省より)

また、受講料金は1万円前後となっています。

 

ロープ高所作業特別教育

 

事業者は労働者をロープ高所作業に関する業務に就かせるときに、安全のための特別教育を行う必要があります。(平成28年7月1日施行)

また、ロープ高所作業とは「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、昇降器具を用いて、労働者が当該昇降器具により身体を保持しつつ行う作業(四十度未満の斜面における作業を除く。) (安衛則第539条の2より)」とされています。

特別教育の内容

資格を取得するためには、下記のカリキュラムの修了が必要です。

【学科科目】
  • ロープ高所作業に関する知識 [1時間]
  • メインロープ等に関する知識 [1時間]
  • 労働災害の防止に関する知識 [1時間] ・法令関係 [1時間]
 
 
【実技科目】
  • ロープ高所作業の方法、墜落による労働災害防止のための措置、安全帯と保護帽の取扱い [2時間]
  • メインロープ等の点検 [1時間]

「ロープ高所作業」での危険防止のため 労働安全 … – 厚生労働省より)

また、受講料金は10,000〜15,000円前後となっています。

伐採に使用する重機に関する資格

特殊伐採を行う際に、取得しておくと便利な資格をご紹介します。伐採した木を運び出したり、作業時の安全を確保したりと役立てましょう。

刈払機取扱作業者安全衛生教育

刃が回転する刈払機(草刈機)は林業のみならず、ゴルフ場の芝生や河川沿いの草刈りなど作業で幅広く使用されています。刈刃の跳ね返りや転倒などにより刈刃に接触する労働災害が多発しており、取り扱いには注意が必要です。

平成12年2月16日付け基発第66号「刈払機取扱作業者に対する安全衛生教育について」により、新たに刈払機取扱作業に従事する者に対しては特別教育に準じた安全衛生教育を行わなければ、作業に従事できません。

学科5時間と実技1時間の特別教育を受けることで、修了証が交付されます。

 

クレーン取扱業務等特別教育

 

つり上げ荷重5t未満のクレーン(移動式クレーンを除く)の運転業務を行う労働者は、安全又は衛生のための特別教育を受けなければならないと義務付けられています。

修了後に取り扱えるクレーンには、下記が該当します。

  • 天井クレーン
  • 橋形クレーン
  • ジブクレーン(クライミングクレーンを含む)
  • テルハ など

 

学科9時間、実技4時間の特別教育を修了する必要があります。

 

小型移動式クレーン運転技能講習

つり上げ荷重5t未満の小型移動式クレーンの運転作業に従事する方は、労働安全衛生法に基づく運転技能講習を修了しなければならないと義務づけられています。

小型移動式クレーン免許で運転できるものは、以下のものになります。

  • トラッククレーン(積載形トラックトレーンを含む)
  • ホイールクレーン(ラフテレーンクレーンを含む)
  • クローラクレーン
  • 浮きクレーン
  • 鉄道クレーン
  • その他4.9トンまでの小型移動式クレーン

 

18歳以上であれば運転免許を持っていなくても講習を受ければ取得することができますが、運転免許を持っている人に比べて、講習の内容が多くなります。

新しく資格を取得する場合は、学科と実技を合わせて20時間の特別教育を受講する必要があります。

 

伐木等機械の運転の業務に係る特別教育

 

平成26年6月1日から、伐木等機械、走行集材機械、架線集材機械、簡易架線集材装置は,

労働安全衛生法令(安衛法令)上の木材伐出機械等として、新たに規制の対象となりました。

上記規制の対象となっている機械(装置)の運転業務を行う労働者は、特別教育を修了しなければなりません。具体的に対象となる機械は、ハーベスタ、プロセッサ、木材グラップル、グラップルソー、集材車等となっています。

木寄せや玉切り、木揃えなど、林業において必要な作業を行うための機械が運転できるようになります。修了証の交付には、学科6時間と実技6時間、合計12時間の講習を受ける必要があります。

 

玉掛け技能講習

 

制限荷重1t以上の揚貨装置及びつり上げ荷重1t以上のクレーン、移動式クレーンもしくはデリックの玉掛け業務に従事する方は、労働安全衛生法に基づく技能講習を修了しなければなりません。

林業や建築業でよく見かけるクレーンにはフックがついており、そこに荷物をかけて移動させることがあります。そのフックに荷物をかけたり取り外したりする作業全般が「玉掛け」と呼ばれています。

玉掛けは、玉掛け技能講習(または玉掛け特別教育)を修了していない者が行うことはできません。特別教育は、学科講習5時間・実技講習4時間で、通常2日間で行われることが多いです。

林業に関する国家資格「林業架線作業主任者」

林業架線作業主任者は、林業に携わる労働者が取得したい国家試験の一つです。 山林で伐採した原木を機械集材装置や運材索道などを使って運び出す際に、労働者の配置や作業の指揮を行う監督者としての役割を果たします。

林業架線作業主任者の仕事は知識と技能が要求されるため、試験に合格した場合、免許を申請する際には3年以上の林業架線作業の業務経験を証明する書類が必要です。

まとめ

特殊伐採は、山林だけでなく住宅街などでも必要とされています。高所かつ狭小地での作業となることが多く、高い技術と安全に配慮するための知識が求められるのです。

伐採に必要な資格だけでなく、高所作業の資格や重機の資格を取得することで、安全に配慮して特殊伐採を行うことができます。

私たちは、「伐木等の業務に係る特別教育」や「ロープ高所作業特別教育」の資格を取得し、特殊伐採のプロとしてお客様のご依頼にあたっています。

アーボプラスはお客様のご要望を聞き予算の中で最大限お客様の利益になるよう提案・作業しています。

株式会社アーボプラスFacebookInstagram に、実際の危険木・支障木の写真や役立つ情報を載せています。

危険木支障木の特殊伐採を考えている方はぜひチェックしてみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。