日本の負の連鎖を止める政策?日本の森林が抱える課題を解決するための環境税・森林環境譲与税とは?

 

 

去年の12月に母校でもある京都府立林業大学校の林大祭に行ってきました。

同期や先輩、先生に久々に会って、就職先の情報や普段何を行っているかなど意見交換しました。

林業大学校には毎年様々な企業・森林組合・市町村などから求人募集が来ます。

その求人情報やインターンシップなどで自身の就職先を選びます。

去年お世話になった先生に会った際、『環境税・森林環境譲与税が成立してから林業大学校にくる市町村の求人が増えた』という話を聞きました。

どうやら森林環境譲与税が市町村に配布される一方で、市町村側が「どの様に扱えば良いのか分からない」といった声もあり林業に詳しい人の求人をかけたのが主な理由だそうです。

新しく増える環境税・森林環境譲与税について紹介します。

森林環境譲与税とは?

森林環境税・森林環境譲与税をご存知ですか?

2019年に森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律が設立したことで森林環境税と森林環境譲与税が創設されました。

創設された森林環境税は2024年から1人当たり年額1000円が課税され、収入額は森林環境譲与税として各市町村に譲与されます。

すでに森林環境譲与税は各市町村・各都道府県に譲与されており2024年から森林環境税の課税が開始されます。

一体何故森林環境税・森林環境譲与税は創設されたのでしょうか?

創設理由・効果

日本は先進国の中でもトップクラスの森林率であり、森林資源が豊富な国です。

古くから林業(伐採・素材生産)が行われ生活や文化の中に木材が多く使われていました。

また、森林は水源涵養や地球環境保全といった公益的・多面的機能があり私たちの普段の生活に様々な恩恵を与えています。

森林の持つ多面的機能とは?健康的な森林が持つ8つの機能をまとめて紹介←多面的機能について興味がある方はクリック

そのため適切な森林整備を行なっていくことが国民の生命を守ることにつながります。

しかし、私たちの生活を支えている森林には所有者が不明、境界の不明確、森林の整備不足・後継者不足といった課題が挙げられます。

特に今、課題となっているのが所有者不明林です。

時代の流れとともに都市への人口集中(若年層の移動)によって地方・山間地域の人口は減少傾向にあり、整備不足の森林が増えてきました。

整備されていない森林は多面的・公益的機能が低下、枯れ木や倒木が増加してしまいます。

森林の多面的機能が失われると土砂災害や洪水が起こり、枯れ木や倒木が土砂と主に流れてきたり、橋などに溜まることで水が外へ溢れ出し洪水の原因になります。

このように整備不足な森林を整備したくても森林は所有者の財産であり、所有者の許可を得なければ伐採してはいけないため整備ができません。

こうした現場を打開するため2018年に成立した森林経営管理法を踏まえ、温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るため多面的機能に必要な森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保するため森林環境税が創設されました。

環境譲与税の事例

森林の所有者・境界の明確化や森林整備不足を改善・解決できるように創設・譲与されている森林環境譲与税ですがどのように使われているでしょうか?

林野庁が発表した令和2年度の森林環境譲与税の使い道については全国1741市町村の7割は間伐等の森林整備に使用しています。

森林所有者の中には自身では森林の整備が行えないと判断し、森林経営管理制度で市町村に管理を委託している方もいます。

森林環境譲与税では手入れ・管理が遅れている森林の整備・間伐から、所有者が不明になっている森林の所有者特定を行っています。

例えば、弊社の所在する京都府京都市では森林所有者を効率的に特定するため固定資産課税台帳や林地台帳など様々な資料に記載されている森林所有者名簿を照合するツールのシステム開発といった新規投稿情報システムを充実させ、意向調査や森林計画作成をより効率的に行える様にしました。

また、同府の福知山市では森林の境界の明確化や森林資源情報の整備を目的に航空レーザー測量を行い、意向調査実施の優先順位を定めた福知山市森林経営管理意向調査実施計画を策定しました。

このように、森林譲与税が市町村に配分されてから、様々な自治体が森林整備に向けて動き出しています。

最後に

今回は、森林環境税・環境譲与税について書きました。

日本は森林資源に恵まれている一方で、森林の管理手入れを行う人材が足りておらず、年間伐採料より成長量の方が多いのが現状です。

また、私有林が多いにも関わらず、森林所有者の中には自身の所有林の場所・範囲、隣接林との境界が分かっておらず、中にはいったことが1度もないという方もいます。

日本は木材関税を撤廃もしくは減少したことで国産材の価格は低下し日本の林業は低迷しました。

このことについては下の記事で詳しく紹介しているので興味のある方は是非読んでください。

コロナウイルスの影響で起こったウッドショックの原因と日本の木材供給の脆弱さの根本とは

森林を手入れしても、山主に利益が残らない(残らないどころか赤字になってしまう)ため、多くの森林所有者が手入れ・管理をしなくなり日本の森林は荒廃してしまいました。

木材価格低迷→山主に利益が残らない→森林の手入れ管理をしない→森林荒廃→良材が少ない→高く売れない→山主に利益が残らない

という負の連鎖を終わらせて欲しいです。

気になる点、質問ございましたら気軽にFacebook株式会社アーボプラスにコメントしてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。