こんにちは、ナカイです。
これまで林業の作業システムや道具、林業という仕事の魅力など様々な記事を書いてきました。
ご存知の方もいるかもしれませんが林業は日本の全産業の中で最も労働災害の発生率(千人率)が高いです。
労働保険に至ってはトンネル工の次に高く危険な仕事のイメージを持っているかもしれません。
もしかしたら林業=危険な仕事をしたい人の集まりなんて思っている方もいるかもしれません。
しかし、林業はそんな職業じゃありませんし、仕事の危険もコントロールすることができます。
今回は林業の仕事における危険と危険の防ぎ方について紹介します。
林業の労働災害
導入でも書きましたが、林業は全産業の中で一番労働災害が多い職業です。
死傷災害は減少傾向で、2000年には3,083件あったのに対し2020年は1,275件です。
一方で死亡災害では減少傾向にあるものの近年は横ばいになっています。
令和2年度における死亡者数は36人です。
これだけの数値を見ると「やはり林業は危険なんじゃないか?」と思うかもしれません。
しかし、年齢で見ると50歳以上が83%を占め30〜49歳までが16%を占めます。
実は近年の林業労働災害では若年層よりも高齢者が多いんです。
古くから林業は労働災害が多かったため、林業関係者や国が労働安全のため防護服の義務化やチェンソーの改良等を行いました。
その結果、若年層の支障事故は減少しましたが、自己流や安全講習等を受けてこなかった世代の方達の中には今でも安全考慮に欠けた伐採を行う方もいます。
林業の危険とは
林業という職業で危険・事故が起きる確率があり、伐採、造材、集積、搬出といったそれぞれの場面によって危険も変わります。
森林での伐採・造材作業で起こる危険はいくつもあります。
例えば、伐採した樹木が自分の方に倒れてくる、仲間が倒した樹木が自分の方に倒れてくる、チェンソーを使っていて足を切ってしまった、などなど様々です。
しかし、これらの労働災害は防ぎ・コントロールすることができると考えます。
実際に伐採作業中にどのような危険があるのか聞いた話や実際に体験・見たことを紹介します。
樹木の伐採
樹木の伐木作業は林業労働災害で最も事故が起きやすい作業で、林野庁が発表した作業別の死亡災害発生状況では57%を占めています。
伐木作業が最も事故が起きやすい作業と言われているのは樹木が倒伏する際に、ツルやかかり木など様々な理由で樹木が想定外の動きをするため怪我につながります。
下敷き
伐採作業者が事故に遭うケースと周囲で作業していた作業員が事故に遭うケースの2種類があります。
後者は伐採する前に周囲を見渡したり、互いの位置を把握することで防ぐことができます。
実際にアーボプラスではインカムを使い常にお互いの位置を確認することで事故を防いでいます。
伐採作業者が事故に遭うケースにおいてはまず退避経路の確保が大切です。
僕も普段森林で伐採を行っているので退避経路を確認せずに伐採を行いたい気持ちは分からなくはないのですが、命には変えられないのでしっかり確保してください。
次に伐倒方向です。
作業内容によって伐倒方向を考えますが、山側に倒した際は滑り落ちてくる可能性があるので巻き込まれないように退避する必要があります。
アーボプラスでは特殊伐採でも間伐でも『迷ったらより安全な方を選ぶ』ことを徹底しています。
怪我をしてしまうと作業が止まり、治療期間で人手も減ってしまいます。
少し面倒でも怪我や命を落としては元も子もありません。
安全策を取ることで作業も止まらず、利益もしっかり得られるため結果的にコスト安く抑えることができます。
跳ね上がり
傾斜での伐採の際に谷側に伐倒すると根元(ツル)が千切れて根元が跳ね上がる危険性があります。
「学生時代からよく言われるのが立木が倒れ出したら退避しろ」です。
もし跳ね上がった樹木が顎や胸に当たったら大怪我になりますし、過去には死亡例もあります。
跳ね上がりで事故が起こるのは伐採する樹木が生えている地形を見ていないから起こります。
そのため、伐採する際には樹木の重心やツル・枝が絡んでいないかなど確認するとともに、伐倒した後に樹木がどのように動くのかを考え・予測することが大切です。
林内の作業であれば怪我の防止のため樹木の動きや地形を確認しますが、特殊伐採では怪我の防止以外に保護対象物を守る必要があるため、林内作業以上に樹木が動くかを予想・注意しなければなりません。
実際、アーボプラスが伐採を行った現場では神社の裏山に生えていたスギが伐倒後滑り落ちて本殿に当たるリスクがあったため、ワーキングベンチという伐り方で斜面から滑り落ちないようにしました。
最後に
今回は伐採作業における危険と対策、考え方について書きました。
林業は危険・事故になる場面が多い産業かもしれません。
しかし、危険を望んで伐採をしている方は誰もいません。
多くの作業員が自然が好きで先人に感謝し、日本の森林を手入れしていることに誇りを持っています。
チェンソーパンツやイヤーマフなど身体への影響に配慮した道具をどんどん出てきています。
一方で、安全配慮ができていない事業体や作業員がいるのも確かです。
今、林業は高齢化している産業の1つでもある一方で若年層の参入が漁業や農業に比べて高くなっています。
だからこそ、安全に考慮した作業を行わなければ林業に就職してくれる人は減ってきてしまいます。
僕も林業業界の先輩から「この状況の時はここにいてはいけない、こういうリスクがあって、実際にそうなった人がいる」と入社してすぐの現場で教えていただきました。
講習だけでは分からないような危険も、しっかり伝えていくことで事前に事故を防ぐことができます。
安全に配慮しながらも効率的な作業を行える事業体が今後成長してくるのだと思います。
別の記事でも様々な状況での事故について紹介と事故の防ぎ方を紹介します。
気になる点、質問ございましたら気軽にFacebook株式会社アーボプラスにコメントしてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。