えっ、そうなの⁉︎一般の方の視点と林業関係者の視点の違い、考え方のズレを紹介します。

 

 

こんにちは、ナカイです。

休日によく家族で外出するのですが、移動中に妹が「あそこの山は天然林なの?」と指を刺して質問してきました。

指を刺した方向を見ると雑木林が紅葉している森林でした。

僕は林業大学校に入学してから天然林など森林の違いや定義について学びましたが、大学など専門的に学ばない限り森林について知る機会はほとんどないと思います。

一般の方が思っている天然林と林業関係者が思う天然林にはズレがあります。

僕自身高校卒業するまで森林について専門的に勉強した事がなかったので、森林について学んだ時にいくつも驚きがありました。

今回は今までの現場で聞かれた質問や森林に対しての考え方について一般の方の視点と林業の視点両方から比較していきます。

天然林って何?

天然林においては森林法(行政)・一般・林業の3つの視点から紹介します。

森林法(行政)

森林法における天然林とは人工林以外の全ての森林を指すため、日本の森林面積の5割以上(1348万ha)が天然林に該当します。

また、林野庁が発表した国有林野事業計画によると自然に散布された種子が発芽生育し成立・維持される森林は天然生林として記載されています。

一般の視点

一般の視点だと森林を見ると針葉樹林ではない雑木林や広葉樹林を天然林と思う方が多いように感じます。

有名な登山や観光地は針葉樹が少なく天然更新によって成立している森林が多いため天然林と考える方もいると思います。(ちなみに僕は天然林だと思っていました。)

林業に就職した僕の視点

僕は1度伐採が行われた森林は2度と天然林には戻らないと考えています。

天然林は長い時間、その地域の気候や風土に合わせて変化してきており森林の植物分布が遷移し極相(下層植生から高木まで)になります。

日本の多くの山が古くから伐採されており、天然林・原生林(1度も伐採されていない森林)に該当する森林は世界自然遺産にも登録されている屋久島や知床半島、白神山地などごく限られた地域のみです。

有名な縄文杉もわかっているだけで2000年以上の年月が経過しています。

1、2回天然更新をしたくらいの森林はその地域の気候や土壌に適応した森林にはなりません。

原生林・天然林・人工林の違いは?日本は比較的人工林が多い国なの?←日本の森林について気になる方はクリック

日本は森林を放置しても元に戻る?

日本は世界的に見ても気候や水に恵まれた土地です。

放置しておいてもパイオニア植物から低中木が生えてくるため「放置していても森林になるのでは?」と考えるのも仕方がないことだと思います。

実際僕も高校卒業までは放置しても森林に戻ると思っていました。

しかし、実際に森林(高木が生えている広葉樹林)になるには最短でも20年以上かかります。

日本は気候や土壌には恵まれていますが、急峻な山が多く地震や台風といった災害が多い国でもあります。

100年200年以上の長い年月をかけて植生が変化しその地域に適した森林(広葉樹林帯)になるため十分に成長していない樹木や下層植生だけでは土砂災害が起きる危険性は高いです。

そのため、古くから先人たちは山の木を伐採したら苗を植えていました。

これは後世へ樹木を残すだけでなく、土砂災害等を防ぐことで生活に影響が出ないようにしていたと考えられます。

最近は放置林が増え森林所有者の中には放置しても森林になるという考えの方もいらっしゃいますが、しっかり管理整備して植林してください。

日本の山はこうやって出来た‼︎古くから行われている植林って何?←植林について気になる方はこちらをクリック

元気な樹木を伐採していいの?

以前アーボプラスが危険木の伐採依頼を受け、伐採作業をしていた際に近隣住民の方から「そんな大きな木を伐採していいと思っているのか?」「その木を伐採して崩れたらどうするんだ」と言われたことがあります。

確かに樹木が土壌に根を張ることで土壌が安定することで土砂災害防止機能が働き太く大きな樹木があるから安心と思うかもしれません。

特に山を切り開いて建てられている建物に住んでいる方は余計にそう考えますよね。

しかし林業(危険木の伐採や間伐など)的視点から言えば、重心が高い樹木ほど倒伏する危険性があり、伐採することで重心が低くなり安定します。

広葉樹に関して言えば切り株から新たに芽が出る(萌芽更新する)ため土壌の安定性は変化しません。

また樹木も生きており、成長するため年月が経つと大きくなり、その間に害虫や病気によって樹木の芯が腐ってしまっていることもあります。

樹木は外側がどんどん大きくなっていくため内部が腐っても年月が経てば覆ってしまい外側からはわからなくなってしまうこともあります。

そのため葉がたくさん生い茂っていても樹木自体は弱っていたり、幹が腐ってしまっている場合も多いです。

仮に健康で大きく太い樹木でも生えている場所や伸びている方向、重心によっては、台風で根元から倒伏したり、太い枝が折れて落ちてくる事があり大きい樹木ほど倒れてしまった際の被害も甚大です。

もし、建物に届く範囲の重心が高い樹木がある場合は注意してください。

最後に

一般の方の視点と林業に就職した僕の視点・考え方の違いについて紹介しました。

実際に現場に行かなければわからないことは多々ありますし、専門の方の考え方と自分の考え方に違いがあるのは当たり前だと思います。

林業大学校で森林や林業について様々なことを学びましたがどれも僕が今まで思っていたことと違いました。

事業体に就職してからは、京都や大阪など近畿各地の森林で伐採を行いましたがその地域の気候や手入れによって森林も変化していました。

他にも業界の先輩の経験を聞くことで多角的な視点からの考えられるよう日々学んでいます。

気になる点、質問ございましたら気軽にFacebook株式会社アーボプラスにコメントしてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。