こんにちは、ナカイです。
前の記事で日本・世界の森林火災について書きました。
規模が違う⁉︎世界の森林火災の現状。今もどこかで燃えている。(前編)
規模が違う⁉︎世界の森林火災の現状。今もどこかで燃えている。(後編)
↑よかったら読んでください。
乾燥や燃えやすい樹種が森林火災を大規模化させている原因の一つです。
日本には神社仏閣が多く国宝や重要文化財に登録されているものは古くから残る木造建築物です。
一方で令和元年の日本における森林火災件数は1日平均3件以上です。
昔はこれほど多くなかったかもしれませんが歴史を見ると都が全焼するなどの大きな火災は何度もあります。
しかしながら、今尚残る木造建築は多くあります。
なぜでしょう?
今回はなぜ森林火災は起きるのに神社仏閣は被害が少なかったのか木の防火性に注目して紹介していきます。
木の防火性とは?
世界で森林火災が大規模化するのは、引火性のある物質を放出したり樹脂として含んでいる木(ユーカリ等)が多く生息している森林や枯れている枝葉が堆積しかなり乾燥した気候である等の環境的要因があります。
木は乾燥している場合可燃性物質として火を大きくする効果があります。
しかし、通常の森林はすぐには燃えず火の勢いを抑える働きがあります。
これは、立木は普段幹・枝葉に水を含んでいるためすぐには燃えません。
植物には延焼防止効果と熱遮断効果があり、含水率(樹木にどれほどの水分があるかの値)の高い植物がこれに該当します。
先人はこのことに気がつき保護対象物の周りに防火林として含水率(がんすいりつ)が高い樹木を設置していました。
防火性の高い木には様々な効果があります。
延焼防止効果では木々の枝葉が飛び火(火の粉)を防ぐことで周りに広がるのを防ぎます。
また、葉の重さの8割は水分と言われており火災時に蒸散することで周囲の熱を放出し温度上昇を抑えます。
周囲の温度を抑えることで気流温度が低下し着火時間が遅くなります。
熱遮断効果では葉が生い茂っている木々が蒸散することで熱の侵攻を遅らせるので火災時に近くにいるだけで火傷を負う範囲が狭まります。
しかしながら、防火性の高い樹木が1本あるだけでは効果が薄いと考えられます。
防火性の高い(含水率の高い)木が密集することで大きな効果を発揮します。
これは災害時の調査からわかっており樹木の密集が少ないもしくは、ほとんどなかった避難場所は火災時に大きな被害を受けていました。
ここからは防火性の高い樹種を紹介します。
防火性の高い樹種
防火性の高い樹種であるイヌマキとイチョウの2種類紹介します。
イヌマキ
イヌマキはマキ科マキ属の常緑針葉高木で日本では関東から以西に分布しています。
比較的暖かい地域に生息し庭木などで利用されています。
中国では縁起物として利用されており一時期日本から輸出されていました。
古くから防火防風などの機能があるため屋敷林や生垣などにも利用されていました。
強い耐蟻性(たいぎせい)があり、シロアリにも有効なため沖縄県では高級建築材として使われていました。
首里城にも使われていたが再建する際に材が足りず台湾ヒノキなどが用いられました。
イチョウ
イチョウはイチョウ科イチョウ属の落葉高木で日本では街路樹や神社仏閣の系内に多く植えられています。
世界最古の現生樹種の1つで国際自然保護連合のレッドリストにも載っています。
生育環境にあまり縛りがなく、萌芽力も盛んで病害虫にも強いなど多くの利点から様々な場所(古くから神社仏閣の境内)に植えられています。
樹皮が厚いため防火性が高く、江戸時代に防火林として火除け地にも植えられた。
実際に関東大震災などで防火の役割が報告されており、日本の街路樹として多く植えられるようになりました。
ここまでは防火性の高い樹種を紹介しました。
ここからは燃焼しやすい樹種を紹介していきます。
スダジイ
スダジイはブナ科シイ属の常緑広葉樹で温暖で多湿の環境を好みます。
そのため地域によってはレッドリストや天然記念物に指定しているところもあります。
椎茸のホダ木や船舶材等に利用されており防火林もそのうちの1つです。
近畿では清水寺の周り(東山)にも多く生えており古くから防火林として植えられた森林だそうです。
実際例
ここまで樹木の防火性について説明してきました。
「本当に効果があるのかな?」と思うかもしれません。
なので実際に起きた事例を紹介します。
関東大震災
木の防火性が機能した火災・災害の中で記録上1番大きな災害が関東大震災です。
関東大震災では数十箇所で火災が発生し3日間燃え続けたそうです。
震災後に調査が行われ火災発生時に避難した箇所が火に囲まれても安全であったかどうかの結果が報告されました。
踏査結果によると避難場所の面積が大きく樹木が多数生息している場所は多くの人が助かりました。
今回は調査結果を1部紹介します。
最も避難した人数が多かったのは上野公園です。
避難人数が50万人にも及びましたが多くが無事で樹木も1部が焼失しました。
しかしながら、枯死した木は少なくシイノキに関しては枯死したが枝葉は焦げず火の粉を防いだとありました。
浅草公園(浅草寺に1947年まであった公園)は様々な樹種が植えられていたが特にイチョウとシイノキが多く、公園内にある観音堂や五重塔が火災から免れました。
このように樹木には火を抑える効果があります。
最後に
いかがでしたでしょうか?
防火性の高い樹木について書きました。
先人の記録には燃えにくい木を健在として使うように変えてあります。
現在でも防火性の高い樹種を植えることで重要文化財を保護している箇所は多くあります。
兵庫県の赤穂市には37haもの防火保安林が設置され、火災時に火を食い止めるようになっています。
街路樹に銀杏が多いのにも防火性という理由がありました。
災害時に避難するなら防火性の高い樹種があるところがいいと思います。
気になる点、質問ございましたら気軽にFacebook株式会社アーボプラスにコメントしてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。