こんにちは、ナカイです。
よく色々な方に林業に勤めているというと「林業って森林破壊なんじゃないの?」と聞かれます。
実際に現場でも「森林破壊をするな」と言われたこともあります。
その方達に答えるとしたら日本の林業は森林破壊ではありません。
なぜ日本の林業を森林破壊と考えるのか
中学高校の社会科の授業で世界各国の森林破壊について学ぶと思います。
多くの方が東南アジアや熱帯の森林が焼畑や過剰伐採のイメージを持ち、日本の林業も同じだと勘違いしてしまいます。
なのでまずは、現在世界で起きている森林破壊について説明します。
世界で起きている森林破壊
森林破壊と言われて何を思い浮かべますか?
最近でいうとオーストラリアの大規模な山火事ですか?焼畑や過剰伐採、農地や牧草地の開発なんかも世界では起きています。
世界の森林はいまだに減少が続いており、1990年〜2010年までの20年間で1億3500万haの森林が減少しました。
これは日本の国土面積が3780万haとすると、この20年で日本3.5個分の面積の森林が失われています。
想像を遥かに凌駕する面積じゃないですか?
世界の森林が減少している主な理由は、人口増加による農地・牧草地化や薪炭材利用、木材消費量の増加による伐採、非伝統的焼畑農法、地球温暖化による自然発火や人による火の不始末で起こる森林火災です。
さらに言うと、世界で減少している森林は多くが原生林です。
ここからいくつか説明します。
1つ目は皆さんもイメージがあるであろう非伝統的焼畑農法についてです。
「非伝統的ってどういうこと?」と思いますよね。
本来の焼畑農法とは古くから行われ、自然に順応した合理的な持続可能農法で伐採後の跡地に火入れを行った後に雑穀類や芋類などを栽培します。
数年作付けを行ったら、別の場所に移動し畑作を繰り返します。
この順序を何年も行なっているうちに最初の土地で2次林が十分に成長し、再度畑として利用します。
このようにや伝統的な焼畑農法は循環しており森林を新たに切り開く必要はなく森林が減少することはありません。
「ならなんで森林減少って教科書に載っているの?」と思いますよね。
実は森林減少の理由の1つとなっている非伝統的な焼畑農法とは森林の循環を考えない火入れ開墾のことです。
つまり、焼いて畑作を行い収穫量が減ったら新たに森林を焼くといった循環を行わないことが森林減少になっています。
2つ目は農民、企業による過度な伐採と放牧です。農民は薪炭用に、企業は先進国に輸出するために商業伐採を行います。
実は日本は世界3位の木材輸入国なんです。
というのも、日本は木材自給力が36%しかないため多くの木材は輸入に頼っています。
経済発展が進んでいる先進国は木材を輸入し大量消費します。
近年では経済発展が著しい中国も木材の輸入量が増加してきました。
発展途上国もまた、人口増加によって木材消費量が増えています。
人口が増加すると食料や燃料が必要になります。
そのために、森林を伐採し燃料を得て畑を広げます。
または放牧する動物の量が増え放牧する範囲が広がります。放牧した家畜は下層植生や新芽を食べてしまうため森林は回復しなくなってしまいます。
他にもリゾートや工業施設を建設するために森林を開発します。
日本の林業は森林破壊ではない
ここまで読んでいただくと、日本も森林破壊の原因じゃんと言われても仕方がありません。
しかし、林業は森林破壊ではないんです。
「はぁ?」ってなりますよね
日本の林業は森林の手入れを行い健康的な森林にしているんです。
健康的な森林とは木と木の間が一定距離空いていて、林床には光が入り下層植生が生息している。
そんな森林が健康的な森林といえます。
また、健康的な森林には多面的機能が私たちの生活を支えているんです。
多面的機能が気になる方はこちらから→森林の持つ多面的機能とは?健康的な森林が持つ8つの機能をまとめて紹介
日本の森林は国土の7割が森林でその内の4割が人工林です。
人工林は私たちの先祖が後世の人たちが困らないように植林を行って成長した森林を指します。
皆さんもよくスギ・ヒノキばかりが生えている森林を見たことがあると思います。
人工林は人が手を加えたため、自然的ではない植生をしています。
本来の自然に従った場合、様々な樹種の木が生えた森林になるんです。
例えるなら、もののけ姫にででくるような森林です。
しかし、もののけ姫に出てくるような森林では木材が使いにくい(作りにくい)っといった欠点があります。
木造住宅の柱に使うような真っ直ぐな材は自然の中には滅多にありません。
だからこそ先人は植林を行い安定して木材を供給できるような森林をつくりました。
林業という仕事
林業の仕事の流れについて知りたい方はこちらから→林業って何してるの?今と未来をつなげる職業、林業の仕事の流れはこれだ‼︎
林業という仕事は先人たちが作った森林を手入れ管理する仕事だと始めの方に書きました。
というのも、人が作った森林は欠点があります。
人工林は植林の時に過密に苗を植えます。
そのため、自然に淘汰されるべき木が成長してしまいます。
さらに、過密に苗を植えるため木がある程度成長すると林床に光が入らなくなるんです。
こういう森林見たことないですか?
林床に光が入らなくなると下層植生が生えてきません。そのため土壌がむき出しになります。
この状態の時に大雨や台風がくると土砂災害などの自然災害が起きてしまいます。
人工林は手入れを行わないと林床に光が入らなくなってしまいます。
そうならないように、日本の林業は人工林の手入れ(除伐、間伐、主伐などの伐採作業)を行なっています。
最後に
いかがだったでしょうか?
世界の森林減少と日本の林業について書かせてもらいました。
多くの方が学校で習う森林破壊と日本で行われている林業を一緒と考えていますが、
日本で木を育て、適度に日本の木を伐採し使う事は、世界の森林を守ることにつながります。
日本の林業は森林の手入れを行うことで健康的で土砂災害防止や地球環境保全などの多面的機能が働く森林を形成、維持しています。
林業は先人が行ってきたことを維持し後世へ残す大事な作業なんです。
気になる点、質問ございましたら気軽にFacebook株式会社アーボプラスにコメント下さい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。