日本は森林率が高く先進国の中でも森林資源に恵まれています。
しかし、日本の林業は衰退の一途を辿っていると言われています。
最近はウッドショックの影響もあり木材が高値で取引されていますがいつまで続くかわかりません。
林業は世界中で行われており日本と同じ、もしくは日本より少ない森林面積でも林業が盛んな国はあります。
日本よりも森林源が少ないにも関わらず、何故林業が盛んなのでしょうか?
今回は世界の林業国と日本の林業を比較していきます。
ドイツと比較する理由
今回日本と比較する国はドイツです。
「なんでドイツと比較するの?」と思うかもしれませんがドイツは日本が林業を手本としている国1つです。
日本では集約型施業などドイツの林業を参考にしてきています。
また、チェンソーメーカーのSTIHLはドイツ発祥のメーカーで世界一販売されているチェンソーです。
このようにドイツは世界の中でも有数の林業国であり、日本とは何が違うのでしょうか?
森林が少ないのに木材生産量の大きいドイツってどんな国?
まずは日本とドイツの森林面積・地形・植生・木材生産量・木材自給率・森林所有者など様々な点を比較していきます。
ドイツは国土の32.7%が森林のため日本に比べて森林が豊富というわけではありません。
実際森林面積は1,142万haと日本の人工林である1020万haとそこまで差がありません。
むしろ森林面積でいうと日本は2,500万haのためドイツの2倍です。
地形は概ね平坦であり一部の森林を除いて中部に丘陵、南部にシュバルツヴァルト(上記の写真)と言われる傾斜が緩やかな森林があります。
よく北海道とドイツの地形が似ているといわれます。
一方でドイツは日本に比べて植生が少ないです。
これは氷河期の時代に環境に適応した植物が現在分布しているためトウヒ・モミが33%、カラマツが26%、ブナが31%、オークが10%の割合で分布しており、その他の樹種を合わせても51種ほどです。
日本全土には約1200種の樹木種があると言われており、針広混交林など様々な樹種が分布しています。
樹齢の構成は戦後に植えられた50〜70年生の樹木が多く、次に100年生を超える樹木が全体の20%、20〜40年生が少ないです。
日本より森林面積が少ないドイツですが年間木材生産量(2018)は6,400万㎥と日本の木材生産量(3,372万m3)の約1.9倍です。
実は1989年までは日本の方が木材生産量が多く、1993年以降ドイツは木材生産量を増やし、日本は減少して行きます。
ドイツの森林官は「日本の森林率が72%という数字はもう一度計り直すべきだ」と言っていました。
また、年々林業従事者が減っている日本と異なり、ドイツでは森林官という職業が医者と同じくらい子供に人気です。
そのため、日本の林業従事者が4.5万人(2015年)なのに対しドイツは120万人以上(単純計算で日本の26倍以上)が林業関係に勤めています。
林業が盛んであり、日本の2倍もの木材生産量のドイツは木材自給率がなんと100%です。
正確にいうと製材品の木材自給率が100%なんです。(製紙・パルプは輸入)
日本の木材自給率は年々回復傾向を見せてきてはいますが令和2年の木材自給率は41.8%と半分以上が未だに輸入材に頼っています。
ドイツの森林所有者は連邦森林法で持続可能で適切な管理の義務があり、50ha以上の森林所有者は定期的な森林管理計画の策定が要求されています。
この計画の主な点は年間伐採量の計算と管理であり、森林所有者は計画に基づき伐採を行います。
そのため伐採許可等は必要なく、森林管理が適切に行われているかは連邦州当局が定期的にモニタリングを行いチェックしています。
もし、適切に管理・伐採されていない・連邦州法に違反した場合は法的に罰せられます。
ドイツの林業は日本の林業と全然違う?
上記でも紹介しましたが、ドイツは地形がなだらかな森林が多いため高性能林業機械が多く導入されています。
また1960年頃から路網整備に力を入れており20mの原木を運ぶトレーラの林道が50m/ha、日本とは異なる高性能林業機械が使用する作業道は60m/haの密度で作成されています。
作業道は一般車両の通行が禁止されており、林業機械や森林を歩く一般市民が利用しています。
日本では適齢期を迎えた森林が多く全国で間伐ヶ行われていますがドイツでは大規模な皆伐が禁止されているため、1haを超える皆伐は行われていません。
また、植生が少ないドイツでは日本のように皆伐して植林するのではなく天然更新によって造林を行い、早い段階で優良木にマーキングを行い集中的に育成します。
集中的に育成を行なった優良木は長伐期施業を行い択伐していきます。
一方で日本は現在植林を行い造林してから皆伐を行う施業が広く行われています。
ドイツのように天然更新を日本が行わない主な理由はシカによる食害・目的の樹種が生育する森林にならない・生育に時間がかかるためです。
ドイツでは伐採時に排気量の大きいチェンソー1人と排気量の小さいチェンソー1人のタッグで作業を行い、大排気量の人が伐倒を行い小排気量の人は先で待っていてスキッダで引っ張る際のワイヤーを取りに行くなどの作業をしています。(小排気量の人は十分に安全な距離をとっています)
伐採したら大排気量の人が枝払いしながらロガーテープで印を付け、小排気量の人は枝先から枝払いしていきます。
日本とドイツ比較 まとめ
国 | ドイツ | 日本 |
地形 | 比較的なだらか | 急傾斜地が多い |
森林面積 | 1142万ha | 2500万ha(人工林は 1,020万ha) |
木材生産量 | 5561万㎥ | 3372万㎥ |
林業従事者数 | 120万人以上 | 4.5万人 |
木材自給率(製材品のみ) | 100% | 51% |
植生 | 51種 | 1200種 |
最後に
今回は林業国であるドイツと日本を地形・木材生産量・の観点から比較しました。
ドイツと日本は森林面積では日本の方が多く、森林資源も豊富ですが、作業システムや供給に大きな課題があると感じます。
路網が整備されていて搬出コストが抑えられるドイツに比べ、日本は1から作業道を作成しています。
降水・台風や土壌によってはつけた作業道が崩れてしまうこともよくあります。
ドイツは地形に適した森林委託をしていますが、日本はまだ日本に適した作業システムがないように思えます。
別の機会に日本と地形の近い国で比較するので楽しみにしていてください。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。