日本の森林は境界が不確定?境界がわからないと森林の施業ができないって知ってますか?

 

 

こんにちは、ナカイです。

2年ほど前に東京から大阪の祖父母の家に家族で引っ越してきたのですが、去年祖父に家の裏山を案内してもらいました。

その時に祖父の所有林と隣接している人の山の境界を聞くと「椿や周りと比べて太い木が目印」と言われました。

言われた直後の僕の頭の中に浮かんだのは『は?腐ったり、倒れたりしたら終わりじゃん』と思いました。

ちょうどその時に、林業大学校で森林の境界について学んでいた最中だったので、『昔からそんな境界で判断していたなんて』と驚きと呆れが交互に・・・。

実際、日本の森林で問題・課題になっていることの1つが境界の明確化です。

今回は日本の森林の境界などの問題について紹介します。

日本の森林は境界がはっきりしていない

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日本の森林の58%(1449万ha)は私有林となっています。

しかしながら、その森林の多くが所有者不明林や境界不明林です。

2017年に国土交通省が発表した山村部(林地)の地籍調査は45%に留まっています。

都道府県別に見ると地籍調査が80%以上住んでいるのは47都道府県中7県しかありません。

特に、近畿や中部、関東は地籍調査の進捗率が20%以下とほとんど行われていません。

「境界が明確化されていないと何か問題でもあるの?」と思うかもしれません。

近年、森林への関心が薄れてきている中で境界がわからなくても影響がないと考えるかもしれません。

しかし、境界が明確化されていないことが林業には大きな問題なのです。

明確化されていないことで起こる問題

森林の境界が明確化されていないと林業(森林施業)においては計画を立てることができないもしくは、コストが大きくかかってしまいます。

間伐や主伐といった伐採、育林、植林など森林施業を行う場合森林の境界が明確であることが必須です。

特に間伐や主伐といった伐採作業は、施業範囲が判らなければ行えません。

仮に境界がわからないまま行い隣の森林まで伐採・搬出を行ってしまうとそれは盗伐になります。

このようなことを防ぐため、森林の施業計画書には境界が必要条件なんです。

近年行われている集約化型施業ではまさに境界が重要になってきます。

集約化型施業では所有者ごとによって分けられるので、境界が間違っている、不明確だと山主さんに正しい収入が入らなくなってしまいます。

境界が明確化していない理由

森林林業白書によると森林の境界が明確化されない理由には『相続等で森林は保有しているが自分の山がどこにあるかわからない』『高齢のため現地で立ち会うことができない』『隣接している森林の所有者が分からない』など様々な理由があります。

実はこの所有者がわからない森林が多く、境界の明確化が進んでいない原因でもあります。

所有者不明林になっていまう理由が森林を相続・購入する際に登記簿への登録・変更がなされておらず、何代も前の所有者の名前のままという事も多々あります。

この場合、森林所有者の血縁に所有権利があるため、血縁の方を探します。

しかしながら、登記簿に登録されていた森林所有者が3代前の場合、森林の所有権利者が何十人もいる事もあります。

全員に森林をいるかどうかを聞かなければならず時間と労力がかかります。

また都市部への人口集中は地方山村の過疎化を早めました。

そのため、森林の場所や境界を先人から聞いたりしていない場合どこかわかりません。

仮に先人から聞いていたとしても、その情報が正しいとは限りません。

そして森林の明確化が進んでいないもう1つの理由が森林所有者の公的な地図・記録がないからです。

土地の所有面積など必ず記録としてあるものが森林はありません。

というよりも古かったり、正確ではなかったりと「これが正しい」と言えるのはほとんどなく、最も信頼を置いていいのは国の地籍調査だと思います。

解決策・課題

始めの方に書いたように森林の境界が明確下している都道府県は7県で、その中の1つが愛媛県です。

愛媛県では航空レーザー測量を行い森林を計測、解析を行いました。

このレーザー測量は微地形図、樹種界図、資源情報などで分析を行い森林GISなどに重ね合わせることで境界を把握し現地で境界確認を行いました。

森林GISには林地台帳情報(所有者情報や地番地籍図)、県森林簿情報(林小班図、森林簿)、施業履歴や空中写真などがまとめられているため計測データを入れるだけで容易に境界を把握できます。

愛媛県の久万高原町は森林の境界明確化が100%できているため、森林施業計画もたてやすく林業が盛んに行われています。

また、所有者不明林は森林経営管理法において、一定の手続きを行えば市町村等が経営・管理を行うことができる特別措置が可能になり今後日本各地の所有者不明林の施業も行われます。

最後に

森林の境界について書きました。

日本の森林は小規模森林所有者が多く、境界や所有者が不明の場所が多いです。

森林簿や林班図を見ても作成時と状況が異なっているため分からないといったケースもあります。

森林の境界を明確にすることは将来の森林・林業のためにも今行う必要があります。

正直、林業側から言わせていただくなら「迷惑」です。

施業も行えない、もしくは迂回しなければならない、放置されていて森林は荒れている、いいところが1つもありません。

もし「境界は気になるけど費用が・・・」と思っている方は、市町村に相談してみてください。

境界確定のための補助金もあります。

所有している森林を放置せず境界の確定や手入れ管理を行ってください。

もし行えない、行う気がないのであれば市町村に管理を委託すべきです。

委託すれば施業管理を行い荒廃した森林も少しは健康的な森林になります。

気になる点、質問ございましたら気軽にFacebook株式会社アーボプラスにコメントしてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。