こんにちは、ナカイです。
意外と知らない落葉と林業の関係 昔の人の生活は木のサイクルに支配されていた!
上の記事でも紹介したのですが昔(の林業で)は冬に木を切っていました。
特に内陸部では半農半林が当たり前の地域が多く江戸時代では村で森林を管理していたほどです。
実は林業にも旬があります。
年中伐採を行っているイメージもあるかと思いますが、林業にも農業同様、収穫時期があるんです。
今回は林業(樹木)の旬、実際に現場で感じる樹木の違い(旬、旬以外)について紹介します。
目次
野菜同様樹木にも旬がある?
野菜などの農作物や魚介と同じように樹木にも旬があり、林業業界ではこの時期を『伐り旬』と呼んでいます。
この伐り旬と呼ばれる時期は樹木が水を吸い上げる量の減少や休眠状態に入る9〜2月になります。
林業は1年中樹木の伐採をしていると思っている方もいますが、伐り旬でない時期は他にも様々なことを行なっています。
林業の仕事については下の記事で紹介しているので興味のある方はクリック
林業って何してるの?今と未来をつなげる職業、林業の仕事の流れはこれだ‼︎
なぜ樹木が休眠状態に入る9〜2月は伐り旬(伐採に適している時期)と言われるのでしょうか?
伐り旬に伐採されるメリット
伐り旬と言われている大きな理由は樹皮がめくれにくく、木材の色味が良いからです。
この2点は良質な木材を育成し高値で販売するのに重要な部分で、林業の本質の1つと言えます。
樹皮がめくれにくい
樹木も植物なので地中の水分を根から吸収します。
この吸収が活発になるのが4〜6月ごろで、その時期になると樹木には十分に水分が蓄えられています。
水分が十分に蓄えられる夏の時期は樹皮と木部の間に水分が豊富にある(樹皮と辺材が旬の時期より離れている)ため捲れやすくなります。
立木を伐採する際に、森林の密度や枝の張り方、重心など様々な条件によって周囲の立木に伐採した樹木が当たってしまうことがあります。
幹と幹が擦れると伐採した樹木だけでなく立木の樹皮もめくれてしまいます。
伐採した樹木が当たり立木の樹皮がめくれると、形成層や辺材が怪我をしたような状態になります。
樹皮が剥がれた部分に菌が入り込むため変形・傷やシミが出てしまい、最悪腐ってしまいます。
利用間伐は間伐を行っている木材も搬出・利用しますが1番の目的は残す木材をより良くするためです。
旬以外の伐採で残存木を傷つけては作業する意味がありません。
木材の色味
2つ目は良材が取れます。
伐り旬に伐採した樹木は水分を吸い上げることを停止し休眠状態に入っているため夏の時期に比べ含水率が低くも樹木自体が引き締まっています。
伐り旬以外で伐採した樹木は水分量が多くカビが生えやすくなってしまいます。
そのため天然乾燥を行う場合、乾燥に時間がかかりカビが生えるリスクも高いことから冬の休眠状態に伐採がされていました。
「すぐに搬出し人工乾燥機で乾燥させるなら問題ない」と思うかもしれませんが、伐り旬で伐採した木材と夏の時期に伐採した樹木では色味が違います。
伐り旬があるのに1年中伐採している?
ここまで読んでいただいた方の中には「冬に良材が取れるのになんで夏でも伐採しているの?」と思うかもしれません。
確かに伐採は1年中行われています。
伐り旬以外の時期でも伐採しているには大きく2つに分けられます。
間伐
夏場など伐り旬でない時期に行っている伐採は主に切り捨て間伐です。
伐り旬に良材を搬出するには間伐が必要不可欠です。
そのため、切り捨て間伐を夏場に行うことで伐り旬に搬出間伐や主伐を行います。
しかし、現在日本の多くの森林(人工林)は放置され手入れ管理が行き届いていない状況です。
そのため、伐り旬だけの伐採ではカバーしきれず、多くの林業事業体が夏の時期も伐採(搬出間伐)を行っています。
実際、間伐を行っていなかった森林の木材は節が多く柱や板など製材しても材木価格が低くなってしまします。
防災・予防・開発
防災に時期は関係ありません。
降水量が増える梅雨の時期(土砂災害など)や秋頃に来る台風に備えて道路や電線、民家に近い立木の伐採を行います。
実際アーボプラスでは危険木や予防伐採等の依頼の多く、『樹木が倒伏する前に、台風が来る前に』と1年中伐採を行っています。
土地の開発や道路拡張の際、伐採してほしいと依頼が来ることもあります。
伐採した樹木でも市場で売れる物は搬出を行い、市場に出せないような短い樹木でも薪・木工品などに利用する事でひのできる限り利用しています。
実際に切り旬以外で伐採すると
実際に夏、伐採すると樹皮はめくれやすいです。
旬の時期と同じように伐採しては樹皮がめくれた材が多くできてしまいます。
そのため、樹皮がめくれやすい時期は樹木の伐採時にツルの両側に切れ込みを入れます。
この切れ込みは、樹木を伐倒した際に樹皮がめくれてもあらかじめ切れ込みを入れることで、切れ込みの部分で樹皮が切れて樹皮の捲れを抑えます。
そうすることで原木の価格が落ちることを防ぎます。
今回間伐に行っている現場でも高さ3〜4m程のところに腐りや傷が入っている立木を何本も見られました。
この腐りや傷の中には、何年も前に行われた間伐で樹皮がめくれたためにできたものもあります。
特にアーボプラスの現場の中には伐採対象樹木付近まで車が入れない(もしくは置けない)ため搬出トラックまで材を人力で運ぶ事がありますが、冬に比べて、夏の時期の木材は水分を多く含んでいる分似た様なサイズの樹木でも重いです。
最後に
林業の旬「伐り旬」について書きました。
樹木が水を吸い上げる春から夏の時期は樹皮がめくれやすい分、伐倒方向には十分気をつけなければいけません。
また、川など水の通り道に近い樹木・樹種によっては冬でも水を吸い上げています。
1月の現場では伐採した樹木をクレーンで釣った際に木口からドバドバと水滴が垂れていました。
樹木は先人が後世のために植えて・手入れしてきた財産であり、私たちは感謝して利用し、後世に良材を残す必要があると思います。
そのため、旬以外の時期の伐採で残存木を傷つけないように最大限注意して作業しています。
気になる点、質問ございましたら気軽にFacebook株式会社アーボプラスにコメントしてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。